「サマー・オブ・ソウル」


この夏、フェスに行けない鬱憤を、この映画で発散できます。

1969年。
ウッドストック・フェスティバルと同じ年。
アポロが月に到着して人間が月面着陸を果たした日。
NYで「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」が開催されていました。
B.B.キング、ニーナ・シモン、スティービー・ワンダー
その他大勢、どのアーティストも超人気/一流ミュージシャンが集い、
30万人の観客達が熱狂の渦に包まれていました。

この映像を撮ったテレビ関係者がいたのに、この模様がテレビ放映される日はなかった。
それが、50年ぶりに発見され、今、世に放たれます。

観衆の勢いを見ていて、暴動が起きやしないかとハラハラもしました。
たぶん当時その会場にいたら、狂喜して音楽を楽しみながらも、
怖かったと思う。
暴力スレスレの音楽だ。

時代背景を考えれば、
キング牧師が亡くなった。
宇宙開発より貧困層へお金をまわせ!、というデモもあった。
ベトナム戦争、マルコムX、ケネディ暗殺。。。

フェスには、警察が警備に来ていました。
同時に、プラックパンサー党からも警備が来ていました。
何かあった際、警察から、フェスの観客達を守るために。
改めて、すごい時代だ、まったく。

ちなみにこの映画、曲リストを見て一曲ずつ聞き返しても、
映画を見たときの興奮にはどうしても届かない。

理由は二つ。
まず、やはりこの観客達と音楽を楽しんでこそ、得られるエネルギーがある。
もう一つは、この映画の編集が素晴らしいことだ。

映画中、フェスの曲は見事に繋いで編集されている。
ダンスパーティのDJが繋いでいるかの如く、曲を気持ちよく連続させている。
そして、曲のブレイク部分やフレーズ、リフレインに、映像編集をしっかり合わせ、
当時の時代の説明、ミュージシャン達の裏事情などが見せられていくのだ。
音楽を聴かせて、意義も見せる。
"this is not just about the music"
と感じる、スンバラしい編集。

監督は、アミール"クエストラブ"トンプソン。
この方、ドラマーで、DJで、音楽プロデューサーです。
初監督作のようです。



30万人の人が足を運び、それ以上の人々が必要とした音楽は、
驚くほど、ノリやすい。
でも、興奮の先に、哀悼や苦みがある。
音楽って、こんなにも思いをのせ、人を繋ぎ、背中を押すものだったんだと、
改めて感じました。

明日、8月27日公開です。

友達と喧嘩した

しばらくです。

30歳になり、
矢部華恵になりました。
結婚したのかと時に聞かれますが
していません。する気配もないです。
占いでは、
幸運を引き寄せやすくする鍵は、
女子会と、一人の時間、と言われました。
その通り、って感じの日々です。

しかし。

今日、女友達と喧嘩しました。

仕事を辞めたいと言い続け、体調まで崩しているのに、
自分の仕事はそんじょそこらの仕事と違い、
簡単にはやめられないのだ!とずっと言っているので

聞いていたら、ムッとしてしまって。

人を見下さないと自分を保てないのか、
責任感ややりがいと、体力の折り合いがついてないんだから
一回、自分が他者から求められることより、
自分のやりたいこととできることをしっかり見つめ直せよと。
私が心配してるのが余計なお世話ならもういいです! くらいな感じで。怒っちゃいました、わたし。

夕方、仲直りしました。

女の友情、保ちました。
ホッとしたぁ。

夜は、映画を見に行きました。
プロデューサーM氏が知人で、
終わってからちょっと、あれこれ話しました。
久々に会えて嬉しかったし、会話がやはり楽なんだなぁM氏。
前振りとかいらないんですよね。本題からでOK。

M氏が以前、監督した映画も、見ていまして。
初対面の時、なんなんですか、あのシーン!と、私は言ってました。
ムカムカしちゃって。
それくらいに熱くなる映画でした。
(これは本当に褒め言葉のつもりです。今でもその映画のエンディングテーマをよく聞いてます)

考えてみるとあの時、M氏だから、言えたんです。
なんかこう、
おべっかなんか使う必要なんかないな、
悪意さえなければ、本音でぶつかった方がいいなぁ。と。
たとえ衝突しても、簡単に人を嫌うことはない度量の深さが
この人にはあるだろうなぁ。と、思わせてくれる方なんです。

そういう人って、そうそういないんだよな。
でも、いるんだよな。

過去に衝突があっても仲良しで居続けてくれている仲間たちの顔が
たくさん思い浮かぶ日でした。

感謝です。
  • 2021年05月15日
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パーティミュージック

ダフト・パンク解散のニュース。
なんか懐かしいような。
悲しいような。

自分自身は、ダフト・パンクに詳しいわけじゃないけど、
SNSを見ていたら、こんな感じの書き込みがあった。

ダフト・パンクをクラブで初めて聞いて、それがやがてクラブでよくかかるようになり、
ラジオでもかかり、テレビでも使われるようになっていくのを、
ワクワクして見ていた。

そんな感じの書き込み。

クラブミュージックが、メインストリームに駆け上っていくのを見るその人の眼差し。
きっと、キラキラしてただろうな。

私は大学生の頃、渋谷のクラブに時々遊びに行った。
渋谷でよく呑んでいた。
多分、勉強と仕事を、子供の頃からやってきて、
いよいよ学校を出てからどうするかという「将来」が迫ってきて、
それから逃れられるのが、渋谷にいる時だったのだ。

渋谷のその当時に行ったバー、友人、知人たち。
話す相手に自分の本名を言わないこともあった。
相手の名前も、別に知らなくていい。もちろん、知っていくこともあるけど。
自分の悩み、自己嫌悪、不安を、言わなくていい関係。
損得勘定なしに、ただ表面的に、でも、滲み出る何かを嗅ぎ分けて、勘で人と付き合う。
あの動物的勘みたいなものが、意外に当たるのは、面白かった。

そんなことを思い出しながら、
夕方、Netflixを開いたら、
おすすめに、映画 「スティーヴアオキ I'LL SLEEP WHEN I'M DEAD」が出てきた。
なぜか今日、やっと、見てみようかなと思えた。

この映画は、Kちゃんが昔、私におすすめしてた映画だ。
私が初めて一人で通うようになったバーの、バーテンダー。
彼は、生まれて初めて私にカクテルを作ってくれた人だ。
いつもおどけている元気印みたいな人で、でもフロアをよく見ていて、
最初は人見知りしてほとんどしゃべらなかった私も、彼が届けてくれる魔法みたいに楽しい時間を求めて、また呑みに行った。
クラブに遊びに行っていて、Kちゃんがひょっこり遊びに来ていたりすると、
より一層楽しくなった。

彼はその後、渋谷の他のお店で働いたりもして、最後は恵比寿に自分の店を開いた。
私は、相変わらず渋谷が好きで、恵比寿にはあまり行かなかった。

それでも。
渋谷にさえ疲れ、
仕事の誰にも、学校の友達にも、家族にも、好きな人にも、話す気力がなくなると、
最後の砦みたいに、恵比寿に行った。
一度、お店に誰もお客さんがいなかった時、いろんな音楽をかけて、
クラブミュージックだけでなく、ロックやら、ソウルやら、いろいろ教えてくれた。
はなえ、アメリカで生まれたのにこれも知らないの?って、次々と。
そして、フランク・シナトラのMoon Riverを流して、彼がアメリカをお母さんと旅した幼少期の話を教えてくれたりもした。
それから店を閉めて、恵比寿駅前 の24時間営業の蕎麦屋で、朝まで、くだらない話をして笑わせてくれた。
恵比寿の空が白んできた朝、ロータリーで彼は
はなえは大丈夫!まったね〜 と手を振って帰っていった。
あれで、頑張ろうってまた思えた。

ある春先の深夜。
知り合いから、
「Kちゃんのとこで呑んでるよ!」と連絡をもらいつつも、
「もう寝るところだからまた今度〜」と答えてしまった。
その時電話口にKちゃんが出て「スティーヴアオキの映画、観た?」と言ってて
まだだよーん、と呑気に返した。
観たら感想伝えよう、なんて思っていたら、
それから一ヶ月もしないうちに
彼は倒れてしまい、
あっという間に逝ってしまった。

Kちゃん、今日やっと見たよ〜。
面白かったよ〜。
なんかわからないけど、最初から最後までずっとツーツーと涙が流れたよ。
スティーヴアオキと彼の父の関係を見て涙しているのか、
Kちゃんを思って泣いてるのかわからなかったけど。
あと、Kちゃん、今日ダフト・パンクが解散したよ。
びっくりした?

桜が咲いて少ししたら命日だな。
命日じゃない日も、思ってるぜぃ。
私もいつかそっちに行ったら、また、Kちゃんの美味しいカクテルの「ミネフジコ」作ってね。


  • 2021年02月23日
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2月のおすすめ映画


絶対、見た方がいい作品。

原案は佐木隆三さんの『身分帳』。

刑務所を出た男が、どうやって社会で生きていくのか。
男が我慢をして苦しむ部分、理不尽さ、社会の陰険さ、
それは
多くの人が折り合いをつけていく日常なんだけど
観ながら、それに対して、「嫌」という感情を、自分は蓋していなかったかなと。
目すら背けていなかったかな、と。
そんなことを思うと、
男の暴力は絶対にダメなものなのに、
きっかけとなる悔しさ、怒り、衝動には、どうしようもなく美しいものもありました。

見終えて、映画館(試写室)を出たくありませんでした。
外の、一般社会に戻りたくない、
いろんな人の悪意のない無神経に触れたくないし、生き抜くためのずぶとさを被って帰りたくない、
ずるむけになったこのままの状態で、まだこの椅子に座っていたい、と思いました。
映画を観ていて、帰りたくない、って、我ながら書いていて、不思議な感想です。。




日本では始まったばかりの、
受刑者たちが言葉を発して、みんなでいろんなことを考えたり、課題に取り組んだりする、「TC」。
そんな、みんなで丸くなって話したくらいで心なんか開くもんかい、なんて最初は思っていましたが、
その疑念は、映像によって払拭されました。
こういう時、映像の力ってすごい、って思わされます。
ていうか、ここまでカメラ入れたのか、すごいな、という驚きもありました。

この「TC」。
私も受けたい。
受刑者じゃないから無理だけど・・・。
一般社会にも必要なんじゃないか、と感じます。
例えば相変わらずずっと社会から消えないし、周りで見聞きする、「パワハラ」。
こういうトラブル、ほとんどの人が、どの立場であっても被害者意識を抱いているように思うのです。
加害の自覚を持つ、それに気づいたり反省する以前に、自分の抱える苦しさもあふれそうになっている…。
TCって、あらゆる人に、いかせないのかな…。
そんなことを思う一方で、
この、私語がなかなか許されない刑務所/更生施設という環境下だからこそ、
TCになると、みんな話せる、他の人の話も聞ける、という状況下だからこそ、
言葉を丁寧に選び、考えられるのかな、とも感じたりもします。
実は来週、監督の坂上香さんが渋谷のラジオに来てくださることになりました。
そこで彼女に聞いてみようかな、どう思うのか…。

茂木健一郎さんも、プリズンサークルのことをyoutube内で話してます。
よろしければ。



  • 2021年02月08日
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家なき子

映画、家なき子が、去年、結構好きでした。
もしかしたら1番だったかもしれません。



コロナ禍。
正直、いい加減、疲れました。

その中で、こういう童話のような話に浸れる時間は、
童心かえるようで、よかったです。
童心って、あったかさと、不安と、両方が胸にいっぱいになるんですね。
別に、甘えるような気持ちになるだけじゃない。
肌感覚がすごく敏感になり、
人の善意と悪意に敏感になる。

母と、映画館で見ようねって約束したのに、
行きそびれてしまったな…。

地方によってはまだ公開中のようです。

私、童話を全然通ってきませんでした。
そんな自分みたいな人でも、浸れます。
  • 2021年01月29日
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矢部華恵

Author:矢部華恵
 
機を織るようにつなげていきたい
日々のこと、本のこと、
音楽のこと、出会った人びと…

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